ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『中国化する日本――日中「文明の衝突」一千年史』與那覇潤、文藝春秋、2011

 本書は好意的な批評が多く聞くので興味を持ったのですが、私のような歴史の知識に対して門外漢で、確たる歴史視点を持っていない者にとっては退屈な論文でした。

 「本書は、歴史学の方法を使って、そのような新しい日本史を描きなおすものです。そこで鍵になるのが、私たちが「絶えず進歩してきた」とする「古い日本史のストーリー」で頻繁に使われてきた「西洋化」・「近代化」・「民主化」などに代わる「中国化」という概念です。」(12頁より)と著者が「はじめに」で宣言しているとおり、中国の宋の時代に導入された社会構造を「中国化」と説明し、それに沿って、今まで顧みられなかった宋代以降の中国史と、鎌倉時代以降の日本史を見直しているものです。

 それらは最近の歴史学の視点であるようで、それが確固としたものなのか、それとも一部の人が主張しているだけなのかわからないのですが(それがごちゃ混ぜになっているように感じるのが本書の欠点だと思われます)、素人にとっては興味深いものでした。

 大学の講義を元に執筆されたようなので、文章にその場のノリを感じる勢いが見られて飽きずに読み続けることができるのですが、あまりにもシンプルに解説されているので、内容に対し「本当かな」という疑う視点を何度も抱きました。本書に書かれていることは、今、この時点だから通用するストーリーであって、日本の現状が変われば通用しないのではないでしょうか。

 でも、今の日本の政治家が結果的に世襲になっても、選挙で大きな不満があがらないのは、中国化してるからなんでしょうかね……。

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史