ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ミレニアム2 火と戯れる女』スティーグ・ラーソン, ヘレンハルメ美穂, 山田美明訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,2005→2011

 世界的ベストセラーになった「ミレニアム」シリーズ第2作。第1作が孤島ものを横溝正史が現代風に書いたプロットでしたが、本作では一転、謎が謎を呼ぶ途中で読者に本を置かせないスリラーになっていました(つまり謎解きはない)。

 リスベットの後見人のピュルマンがリスベットに復讐を仕掛けるべく計画を遂行していく過程、リスベットが大胆かつ慎重に自らの生活を構築していく過程がさながら『ジャッカルの日』のようで非常にスリリング。そこに、ミカエル・ブルムスフィクトが発行している『ミレニアム』にジャーナリストのダグとミアが子どもの人身売買と強制売春の告発記事を売り込んできた。その記事に反応した人物がダグとミアを襲ってくる。その人身売買と強制売春にリスベットの過去が絡んでいく。

 iBookやイケヤなどメーカー名を用いた描写が非常に細かく、それが話そのものは古風なのに現代を舞台にしているように感じます。また、本作の魅力はリスベットのキャラクターなんでしょうけど、読みながらリスベットのキャラクターがあざといなあ、と何度も感じました。リスベットは姿・形や言動が奇矯に描写されているのですが、基本的に善良で読者に同情を抱くようになっているのです。というわけですが、巻を置くにあたわずというストーリー性、しかしページ数が長すぎて疲れるなどを総合的に考えて、☆☆☆☆というところです。

ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム2 火と戯れる女(下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)