ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『爬虫類館の殺人』カーター・ディクスン, 中村能三訳,創元推理文庫,1944→1960

 カー全72長篇中41作目の作品。カーの作品リストは、キャラクターシリーズ毎であったり、ペンネームごとであったり、シリーズを無視して発行順に並べたものがどこを検索してもありません。文庫のソデも翻訳順で、どれが古く新しい作品なのかさっぱりわからないので、ウィキペディアを見て、以下のように並べ直してみました。正確なのかどうかわかりませんが、まあ目安ぐらいにはなるでしょう。

1 1930年 It Walks by Night 『夜歩く』
2 1931年 Castle Skull 『髑髏城』
3 1931年 The Lost Gallows 『絞首台の謎』
4 1932年 Poison in Jest 『毒のたわむれ』
5 1932年 The Corpse in the Waxworks 『蝋人形館の殺人
6 1933年 Hag's Nook 『魔女の隠れ家』
7 1933年 The Mad Hatter Mystery 『帽子収集狂事件』
8 1934年 Devil Kinsmere (ロジャー・フェアベーン名義)
9 1934年 The Blind Barber 『盲目の理髪師』
10 1934年 The Bowstring Murders 『弓弦城殺人事件(黒い密室)』 (米国版初版のみカー・ディクスン、以降はカーター・ディクスン名義)
11 1934年 The Eight of Swords 『剣の八』
12 1934年 The Plague Court Murders 『黒死荘の殺人(プレーグ・コートの殺人)』
13 1934年 The White Priory Murders 『白い僧院の殺人』
14 1935年 Death-Watch 『死時計』
15 1935年 The Red Widow Murders 『赤後家の殺人』
16 1935年 The Three Coffins 『三つの棺(魔棺殺人事件)』
17 1935年 The Unicorn Murders 『一角獣の殺人』
18 1936年 The Arabian Nights Murder 『アラビアンナイトの殺人』
19 1936年 The Magic Lantern Murders (英国版題名)『パンチとジュディ』
20 1936年 The Murder of Sir Edmund Godfrey 『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』
21 1937年 The Burning Court 『火刑法廷』
22 1937年 The Four False Weapons 『四つの兇器』
23 1937年 The Peacock Feather Murders 『孔雀の羽根』
24 1937年 The Third Bullet 『第三の銃弾』 (カーター・ディクスン名義)
25 1938年 Death in Five Boxes 『五つの箱の死』
26 1938年 The Crooked Hinge 『曲った蝶番』
27 1938年 The Judas Window 『ユダの窓』
28 1938年 To Wake the Dead 『死者はよみがえる(死人を起こす)』  
29 1939年 The Problem of the Green Capsule 『緑のカプセルの謎』
30 1939年 The Problem of the Wire Cage 『テニスコートの謎(足跡のない殺人)』
31 1939年 The Reader is Warned 『読者よ欺かるるなかれ(予言殺人事件)』
32 1940年 And So to Murder 『かくして殺人へ』
33 1940年 Nine-and Death Makes Ten 『九人と死で十人だ』
34 1940年 The Man Who Could Not Shudder 『震えない男(幽霊屋敷)』
35 1941年 Death Turns the Table 『猫と鼠の殺人(嘲るものの座)』
36 1941年 Seeing is Believing 『殺人者と恐喝者(この目で見たんだ)』
37 1941年 The Case of the Constant Suicides 『連続殺人事件』
38 1942年 The Emperor's Snuff-Box 『皇帝のかぎ煙草入れ』
39 1942年 The Gilded Man 『仮面荘の怪事件(メッキの神像)』
40 1943年 She Died a Lady 『貴婦人として死す』
41 1944年 He Wouldn't Kill Patience 『爬虫類館の殺人(彼が蛇を殺すはずはない)』
42 1944年 Till Death Do Us Part 『死が二人をわかつまで(毒殺魔)』
43 1945年 The Curse of the Bronze Lamp 『青銅ランプの呪』
44 1946年 He Who Whispers 『囁く影』
45 1946年 My Late Wives 『青ひげの花嫁(別れた妻たち)』
46 1947年 The Sleeping Sphinx 『眠れるスフィンクス
47 1948年 The Skeleton in the Clock 『時計の中の骸骨』
48 1949年 A Graveyard to Let 『墓場貸します』
49 1949年 Below Suspicion 『疑惑の影』
50 1950年 Night at the Mocking Widow 『魔女が笑う夜(わらう後家)』
51 1950年 The Bride of Newgate 『ニューゲートの花嫁』
52 1951年 The Devil in Velvet 『ビロードの悪魔』
53 1952年 Behind the Crimson Blind 『赤い鎧戸のかげで』
54 1952年 The Nine Wrong Answers 『九つの答』
55 1953年 The Cavalier's Cup 『騎士の盃』
56 1955年 Captain Cut-Throat 『喉切り隊長』
57 1956年 Fear Is the Same 『恐怖は同じ』 (カーター・ディクスン名義)
58 1956年 Patrick Butler for the Defence 『バトラー弁護に立つ』
59 1957年 Fire, Burn! 『火よ燃えろ!』
60 1958年 The Dead Man's Knock 『死者のノック』
61 1959年 Scandal at High Chimneys 『ハイチムニー荘の醜聞
62 1960年 In Spite of Thunder 『雷鳴の中でも』
63 1961年 The Witch of the Low-Tide 『引き潮の魔女』
64 1962年 The Demoniacs 『ロンドン橋が落ちる』
65 1964年 Most Secret 『深夜の密使』 (Devil Kinsmere の改訂版)
66 1965年 The House at Satan's Elbow 『悪魔のひじの家』
67 1966年 Panic in Box C 『仮面劇場の殺人』
68 1967年 Dark of the Moon 『月明かりの闇』
69 1968年 Papa L〓-Bas 『ヴードゥーの悪魔』
70 1969年 The Ghosts' High Noon 『亡霊たちの真昼』
71 1971年 Deadly Hall 『死の館の謎』
72 1972年 The Hungry Goblin 『血に飢えた悪鬼』

 舞台は1940年9月の第二次世界大戦中のロンドンで、爆弾による空襲があった時代。爬虫類館のある動物園の園長が密室で殺された。その部屋は鍵がかけられ、ガスが充満し、隙間という隙間には厚いゴム引きの紙(よくわかりませんが)で目張りをされていた。園長の自殺かと思われたが、殺人現場にいたヘンリ・メルヴェル卿は殺人ではないかと疑う。

 私は全く知らなかったのですが、トリックそのものは推理トリック本などによって有名な作品なのですね。H・M卿によって暴かれた密室トリックですが、そんなことで可能なの、と疑問をもちました。現代でも大がかりな装置がなくては難しいですよね。それよりも犯人像が意外なようで意外でもないようで、まったく推理できませんでした。そういう意味で☆☆☆★というところです。

爬虫類館の殺人 (創元推理文庫 119-2)

爬虫類館の殺人 (創元推理文庫 119-2)