ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『サブカルで食う――就職せず好きなことだけやって生きていく方法』大槻ケンヂ,白夜書房,2012

 大槻ケンヂ氏の発売時にはネット界隈で話題になった語り下ろし新書。メインタイトルはともかく、サブタイトルが魅力的ですね。「就職せず好きなことだけやって生きていく」なんて、趣味をもっている人間ならば、夢みたいな話でしょう。

 本書はまず、冒頭でサブカルの定義を示し、サブカルチャーとは異なるものであり、もっと軽いものであり、例えていえば「アングラ+笑い=サブカル」としています。私なんかも、サブカルにどっぷりはまることはありませんでしたが、少しずつつまみ食いをしていたので、実感として少しわかりますね。

 もう少し加えていけば、80年代のサブカルは、バブル文化のアンチテーゼとして発展していったものではないでしょうか。派手で明るく連帯感をつくるものだけが賞賛されるカルチャーがあって、それに順応していかなくては人間にあらず、のような雰囲気がありましたからね。そんな中に金をもっていない学生などは、精一杯無理して金を稼ぐか、そのおこぼれをもらうか、反抗するしかありませんでした。ネットがありませんでしたから、その反抗のはけ口もありませんでしたし。

 それから、サブカルで食うためにはどうすればいいのか、ということで、「才能・運・継続」が必要な条件としているのですが、まあこれもサブカル界隈特有の、「重い真実、軽い表現」にして述べています。その後は、オーケンがどのようにして食っていったかが時系列に語られています。

 でも編集者としての視点になるのですが、これも語り下ろしですねえ。語り下ろしは、文章を書いてもらうより、確実に時間通りに原稿を受け取ることができるのですが、内容がどうしても浅くなってしまうんですよねえ。だからライブ感もあるし雑誌やネットには合うのですが、単行本にはどうなのでしょう。ネタが良ければ私のように購入する人がいるのですから、それでいいんでしょうねえ。

サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法

サブカルで食う 就職せず好きなことだけやって生きていく方法