ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『釣りおとした大魚』A・A・フェア, 佐倉潤吾訳,ハヤカワポケットミステリ786,1963→1963――は無言電話から始まる。

 バーサ・クール&ドナルド・ラム・シリーズ全27長篇中24作目の作品。原著が出版された年に翻訳がされたようです。当時いかにフェア=ガードナーが人気だったかがわかります。

 鉄鋼の輸入会社の重役のアーチャーが、自分の秘書であるマリリン・チュランが郵便で脅迫状を受けとり、夜間に無言電話がかかってくるので、彼女の24時間護衛をしてほしいという依頼をしてきた。ラムとバーサは12時間ごと交替しながら護衛を行った。ラムは、マリリンにかかってくる電話に話しかけつつ、テープレコーダーで録音しかかって時刻を記録するように言い渡した。バーサと交替すると、ラムはアーチャーを車で尾行した。アーチャーはバーに行ったり、電話をかけたり、ローダ街のビルに入ったりしていた。さらに尾行すると警察もアーチャーを尾行していたのだ。

 翌日、バーサと交替すると、バーサに電話がかかってきた時刻を聞いた。するとバーサはマリリンに睡眠薬を盛られたと文句を言った。録音されたテープを聴いたラムは、マリリンが録音を削除したことを責めた。マリリンは監視されているのは我慢できないとアーチャーに訴え、アーチャーは護衛の依頼を解除した。

 さらにその翌日、アーチャーが入ったローダ街のビルで、ジャネット・ラッティという高級コール・ガールのサーヴィス業を経営していた女が靴下に丸い石をいれたもので撲り、別の靴下で絞殺されたというニュースが流れた。警察が尾行していたのは、コール・ガール組織の客のリストを作るためだったのだ。警察は、ジャネット殺しの犯人として、ラムあるいはアーチャーを疑っている可能性があることを知ったラムは捜査を始めるが……。

 会社のお偉いさんの秘書が脅迫を受けているので、24時間ボディガードしてほしいという冒頭の依頼そのものは魅力的なものの、殺人事件とラムの関わりが薄く、捜査をしていく根拠が薄いため、最後に犯人を指摘しても白けてしまいました。その捜査方法も、メイスンとあまり変わらないんですよね。元弁護士のラム色が強く出てきてしまっています。☆☆☆というところです。

釣りおとした大魚 (1963年) (世界ミステリシリーズ)

釣りおとした大魚 (1963年) (世界ミステリシリーズ)