リンカーン・ライム・シリーズ第3作目の作品。タイトルのエンプティ・チェアとは、『クライエントの心の中の分身・自分自身・重要な人物・事物・身体の一部・架空のものと対話の必要が生じたときに、クライエントの座るホット・シートの前にある空の椅子にその心の対象を座らせ、擬人化して対話を進めていく技法。またはその空の椅子のこと』(http://www.1-ski.net/archives/000325.html)のことといわれています。その椅子は油絵で表現されているのを見かけますね。おぼろげですが、ロジャース法か何かのクライアントを中心とした心理療法関係でした。
アメリカ南部ノースカロライナ州に脊髄損傷の手術のために訪れていたライムとサックスは、殺人を犯し湿地帯に逃亡した少年の捜索協力を依頼された。少年はさまざまな手段を用いて、自らの行方をくらましていたが、それを見抜くライムは少年を発見する。しかし、少年を見て殺人を犯したのは別にいるのではと信じたサックスは、少年を拘置所から出して、それを証明するために、少年と2人で逃亡した。裏切られた想いと少年の有罪を確信しているライムは、サックスを心配するのだが……。
探偵に土地勘がなく、十分な機材もないため、手元にあるなかで捜査を行ったり、地元の警察が反感をもっていたため非協力的であったり、さまざまな制約があるなかで、逃亡犯を追いかけるのが前半。後半は、探偵の手口を知った相棒を追いかける。そのなかで、意外な事実が出てきて、終盤のどんでん返しは面白いです。しかし、伏線を張り切れていないのではとも思いました。というところですが、☆☆☆☆です。
しかし、ライムの性格が、聖人ではなく、むしろ俗人であるところに、アメリカンエンターテインメントの底力を感じますね。
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