ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『喪失』モー・ヘイダー, 北野寿美枝訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,2010→2012

 2012年度のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)賞受賞作。作者のモー・ヘイダーのジャック・キャフェリー警部ものの第5作目の作品。

 冒頭のカージャック事件から少女誘拐事件に至るまでの展開は面白いのですが、語り口は重厚でじっくりしており悠然と進みます。しかし、同じイギリスの作家のジェイムズよりも重く、ユーモアのかけらもない文体は少ししんどく感じました。また、シリーズで変化している人間関係などを愉しむ展開になっているのですが、シリーズ初読者にとっては、それも十全に理解することができません。

 犯人そのものも、まあ意外性はあるのですが、謎解き要素はなく、キャフェリー警部を含む捜査陣は、あるときは科学的に、あるときは経験則にたって地道に追い詰めていきます。したがって☆☆☆というところです。まあ私にはあわなかったということです。

喪失〔ハヤカワ・ミステリ1866〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

喪失〔ハヤカワ・ミステリ1866〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)