どこかは失念してしまいましたが書評で興味をもって手にとりました。イオニアの自然哲学から始まるギリシア哲学の起源を示したもので、なぜソクラテスの思想によって一つの完成をみせるのか、論理的に示しています。といっても、私の哲学の歴史の知識は大学受験程度なので、深い内容まではわからないのですが……。『弁明』がなぜ一つのメルクマールだったのか、本書を読んでわかりました。
それにしても本書でアテネ出身のアルキビアデスを初めて知りましたけど、以下の記述など興味深いですね。なんじゃこりゃあ、って思いました。
そのような若者の代表が、ペリクレスの近親であったアルキビアデスである。彼は主戦派としての帝国主義的言論によって大衆の喝采を浴びた典型的なデマゴーグ(民衆指導者)である。彼は前四一六年、スパルタ側に荷担したメロス島を討伐しに行ったが、壮年の男子を虐殺し婦女子を奴隷にしたことで非難をあび、裁判にかけられた。その後まもなく、シケリア遠征軍の将軍に選ばれたが、そこでヘルメス像を破壊する冒涜行為のかどで本国からの召還命令を受けた。そのとき、こともあろうに、敵国スパルタに亡命し、今度はアテネを倒すことに貢献し、その後にアテネに帰還したという、とんでもない人物である。(179頁より)
- 作者: 柄谷行人
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/11/17
- メディア: 単行本
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