ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ある殺意』P・D・ジェイムズ, 山室まりや訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,1963,1977

 P・D・ジェイムズの第2作目の作品。以前読んだ『わが職業は死』http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20110822 では厳しいことを書いていますが、時を経るごとに、「あんなご都合主義の複雑なミステリはなかったなあ」とやけに面白い記憶だけが残ってきたので、まあ第1作目から読もうとしましたが、『女の顔を覆え』を手に入れることができなかったので、本書に手を出した次第。

 舞台は精神科の医師、看護婦、雑役婦(現在でいう看護アシスタント?)、用務員(?)、タイピスト(秘書?)、麻酔技手(麻酔をかける専門職?)、心理学者(臨床心理士に当たる人?)、精神科ソシヤル・ワーカー(ソーシャルワーカー)、作業療法技師(作業療法士)などが勤めているロンドンの精神科の診療所(クリニック)。その記録保管室のある地下室で、事務長が胸にノミをひと突きにされて殺された。死体の上には木彫りの人形が載せられていた。いったい何の意味をもつのか? ダルグリッシュ警視は、殺人が起こった時刻には外部から入ることが困難だったことから、内部の犯行を疑い、一人ひとり尋問を行う。しかし、アリバイがない者が多く、殺された女も評判が悪かった……。

 本書も『わが職業は死』と同じ感想ですね。殺人が確定するまでは面白かったのですが、一人ひとり尋問を始めるにあたっては、アガサ・クリスティよりも退屈。読む度に眠たくなってしまいました。最後はなかなかスリリングでしたが、他人に勧める度として評価すれば、☆☆☆というところですね。ジェイムズに興味がある人や、1960年代の精神科病院の雰囲気を知りたい人にしか勧めることはできません。

ある殺意 (ハヤカワ・ミステリ 1296)

ある殺意 (ハヤカワ・ミステリ 1296)