ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『人形館の殺人』綾辻行人,講談社文庫,1989,1993

 綾辻行人氏5作目の作品。それにしてもこれが1980年代の作品なんですねえ。(細部はともかく)大枠ではまったく古びていないのが凄い。本書まで綾辻氏の作品を読んでの綾辻氏の特徴は、ミステリはフェアプレイではなくてはならない、ということです。

 ミステリマニアにもかかわらず、なぜ「館」ものをテーマとするのか、名の通るシリーズ名探偵が不在なのか、ホラーの作品が多いのかなど不思議に思っていたのですが、ミステリは作者と読者との遣り取りであり、フェアプレイ」の範囲内であれば何をしてもよいのだ、という考えがあるのだろうと思います(その殻を破る作品もあるかもしれませんが)。

 本作はかなり謎解きミステリとしては、かなりトリッキーといえます。そこのところが賛否両論になっているのでしょう。犯人像としてはレジナルド・ヒルの作品に似たものがありましたが、ヒルの作品はあくまでも物理的なものに限っているのですが、本書は叙述的なトリックとして用いられています。私としては、このユラユラとした感じは、ミステリの醍醐味なので、とても好ましいものです。というわけで、☆☆☆☆というところです。

人形館の殺人 (講談社文庫)

人形館の殺人 (講談社文庫)