綾辻行人氏5作目の作品。それにしてもこれが1980年代の作品なんですねえ。(細部はともかく)大枠ではまったく古びていないのが凄い。本書まで綾辻氏の作品を読んでの綾辻氏の特徴は、ミステリはフェアプレイではなくてはならない、ということです。
ミステリマニアにもかかわらず、なぜ「館」ものをテーマとするのか、名の通るシリーズ名探偵が不在なのか、ホラーの作品が多いのかなど不思議に思っていたのですが、ミステリは作者と読者との遣り取りであり、フェアプレイ」の範囲内であれば何をしてもよいのだ、という考えがあるのだろうと思います(その殻を破る作品もあるかもしれませんが)。
本作はかなり謎解きミステリとしては、かなりトリッキーといえます。そこのところが賛否両論になっているのでしょう。犯人像としてはレジナルド・ヒルの作品に似たものがありましたが、ヒルの作品はあくまでも物理的なものに限っているのですが、本書は叙述的なトリックとして用いられています。私としては、このユラユラとした感じは、ミステリの醍醐味なので、とても好ましいものです。というわけで、☆☆☆☆というところです。
- 作者: 綾辻行人,太田忠司
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/05/06
- メディア: 文庫
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