ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『リガの犬たち』ヘニング・マンケル, 柳沢由実子訳,創元推理文庫,1992,2003

 ヘニング・マンケルの刑事ヴァランダー・シリーズ第2作目の作品。リガとはラトヴィアの首都のこと。ラトヴィアといえば、先日、サッカーの親善試合を行い日本が敗北した国で、ワールドカップ予選で好調な国であるという認識しかなかったのですが、バルト三国の小さな国とは失念していました。(この状態からあんなサッカーの強い国になったのかよ、とも思いましたね)

 スウェーデン南部の田舎町の海岸に二つの死体を乗せた救命ボートが発見された。二人は二〇代のスーツ姿の若者で、心臓を銃で撃ち抜かれており、身元をはっきりさせるものを持っていなかった。検死にかけると、二人の歯の治療跡からロシアあるいは東欧諸国の人間であること、身体の傷から拷問を受けていたことが分かった。前日の夜にそのような予告電話を受けていた警察署は、その電話を書けてきた匿名氏を捜すことになった。

 テレビ等のメディア報道の後、死体はラトヴィアからたどり着いた者であると外務省を通じてラトヴィア政府が連絡してきた。ラトヴィアから捜査官が訪れ、ヴァランダーたちは捜査に協力したのだが、その捜査官はラトヴィアに帰国したら殺されてしまった。

 ヴァランダーは事件に関わりになって、事件関係者に懇願されてラトヴィアに行って行動をするという話で、ミステリ的要素というよりも冒険小説的あるいは謀略小説的要素が強い作品でした。第1作目が正統的な警察小説だったので、第2作が全く異なるものとは思わず面食らいました。

 これはベルリンの壁が壊れて3年目である1992年に書かれたということも影響を受けているのでしょうか。ソビエト連邦が解体され、東欧諸国に対する影響力が弱りつつも、未だに支配者が強い国。しかし隣国としては、その変化を敏感に感じ取らざるを得なかったということでしょうか。これらの目的は果たされたものの、ミステリとしては退屈なところもあり、☆☆☆★というところです。

リガの犬たち (創元推理文庫)

リガの犬たち (創元推理文庫)