ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『3,1,2とノックせよ』フレドリック・ブラウン, 森本清水訳,創元推理文庫,1959,1960

 巻末の解説によると、ブラウン18冊目の推理小説。原著発行の1959年の翌年の1960年に翻訳出版されているということは、当時いかに人気があったかが分かります。原著が出版されたら自動的に翻訳していたのでしょう。タイトルもいかにもヒッチコックの映画のようでクラシックミステリらしくかっこいいですね。たしか、たがみよしひさ氏のマンガで使われていましたね。

 アメリカの地方の小都市で、2名の連続強姦殺人が起き、その犯人を「痴漢」と呼び恐れられていた。痴漢は夜中にアパートをノックして部屋に入り込んで犯行に及んでいた。彼はさらに犯行を重ねようと夜をさまよっていた。

 一方、洋酒のセールスマンであるレイ・フレックは競馬のノミ行為によって、ギャングの胴元から500ドルもの借金をかかえていた。ギャングにとっつかまったレイは24時間以内に返すように脅された。他の方々からも借金をしており金を返す当てがない。さらに金を借りて、ギャンブルで返済しようと、レイの妻のルースを説得しようと試みるのだが……。

 それ以前にレイが酒場で隣り合わせたベニー・ノックスという男が自分は痴漢であると告白していた。レイは偶然であるが2ヶ月前に痴漢をうろ覚えながら目撃していたので信じていなかった。そのベニーは軽い知的障害があり、まじめに働いていたが、自分は痴漢であるという妄想にとらわれていた。痴漢、レイ、ベニーが交錯するとき、この物語は動きだし、皮肉な結末への突き進んだ。

 一種のサイコミステリで、解説によると、雑誌発表時は「痴漢の夜 Night of the Psycho」というタイトルで、 Psychoを痴漢と翻訳していたのです。精神異常者とは使用できないし、サイコでは通じないし、まあ苦肉の策だったのでしょう。後半三者が交錯するのですが、それまでのレイのサイマーぶりのダメ人間の描写が面白かったのでした。なんとなくバランスがよくないのですが、悪い作品ではないので、☆☆☆☆というところです。