ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『緑衣の女』アーナルデュル・インドリダソン, 柳沢由実子訳,東京創元社,2001,2013

 『湿地』で本邦初紹介されたインドリダソンの『湿地』に続く作品でシリーズ4作目のCWAゴールドダガー賞/ガラスの鍵賞同時受賞作品。原著は2001年発行ですから10年以上前ですね。もし当時翻訳されていたのでしたら、サイコミステリに分類されて、あまり評価されなかったでしょう。私は本書をコージーミステリ=小市民ミステリと読み取りました(ただし、重苦しいですけどね)。というのは、ドメスティックバイオレンスがテーマだったからです。

 ストーリーとはというと、住宅建設地で発見された古い人骨の一部は誰なのかを捜査するもの。ここで思い出すのが、『冬のフロスト』で数え切れない事件の中の一つに住宅に古くはないけど誰だか分からない人骨を捜査するというのがありました。『湿地』も『殺人者の顔』のバリエーションでしたから、この作家はそういうきらいがあるのでしょうか。レイキャヴィク警察犯罪捜査官のエーレンデュルは娘のエヴァのトラブルをかかえながら、その人骨は誰かを捜査するために、その土地にあった建物の所有者に当たっていくと……。

 リーダビリティは高いし、何よりも短くて良いのですが、もう少し結末にひねりが欲しいと感じ、☆☆☆★というところです。このテーマですと、ひねりを入れるのは難しかったのでしょうか。

緑衣の女

緑衣の女