ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ものはためし』A・A・フェア, 鷺村達也訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,1962,1962

 バーサ・クール&ドナルド・ラム・シリーズ全29作中23作目の作品。なんと原著が発行されたのと同じ年に翻訳が発行されています。現在ですと『ミステリガール』が映画に合わせて本国で発行前に日本で先に発行されていましたっけ。それだけ人気だったのでしょう。

 ポケミスで173頁でしたので、ちょっとした中編でした。しかしこのスピード感はなかなか他の作品では得難いもので、私が精神的に疲れているのにもかかわらず、あっという間に読み終えることができました。ライトノベルより楽だったかも。まるで1時間ドラマを読んでいるかのようでした。ひょっとしたら、ドラマのノベライズかもしれません。タイトルも『彼岸過ぎまで』と同じくらい適当ですし。

 アレンという若い男が軽はずみなことで自分の人生が破滅してしまうとバーサ&ラム探偵事務所に悩みを持ちかけた。アレンはバーでシャロンという名前のホステスと知り合い、ある夜モーテルに行った。その時モーテルで諍いを起こしシャロンは夜中に帰ってしまったという。しかし次の日、そのモーテルでフィッシャーという地方検事補が水の入っていないモーテルのプールで死体で発見されたという。警察はアレンを疑って捜査すると思われるが、アレンは妻に知られたくないので、モーテルにいたという事実さえもなくしたい。そこでドナルドにシャロンとモーテルに行って泊まって、その夜に宿泊したのはアレンではなくドナルドと言うことにして欲しいいう依頼だった。身代わりの依頼である。ドナルドは引き受けるのに気が進まなかったが、1000ドルという大金を出してきたので、バーサが引き受けてしまったのだが……。

 この後、ドナルドは警察にフィッシャー殺害の疑いを受けて、拘置所に入れられてしまう。さらにフィッシャーが係争に関係していた殺人事件も絡んで混沌した様相を呈するようになります。とくにトリックらしいものはなく、雰囲気で読ませるミステリで☆☆☆というところです。まあ、ひどいという訳でもなく、よいという訳でもなく。

ものはためし (ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック (726))

ものはためし (ハヤカワ・ポケット・ミステリ・ブック (726))

『笑ってくたばる奴もいる』A・A・フェア, 田中小実昌訳,ハヤカワポケットミステリ489,1957,1959→http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20140713

『ものはためし』A・A・フェア, 鷺村達也訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ726,1962,1962→http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20130929

『斧でもくらえ』A・A・フェア, 砧一郎訳,ハヤカワ・ミステリ文庫,1944,1987はこちら→http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20130512

『嘘から出た死体』A・A・フェア, 田中小実昌訳、早川書房、1952→1961はこちら→http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20111003

『馬鹿者は金曜日に死ぬ』 A・A・フェア、井上一夫訳、ハヤカワポケットミステリ389、1957はこちら→http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20090714

『コウモリは夕方に飛ぶ』A.A.フェア、田中小実昌訳、早川書房、1942→1984はこちら→http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20080618

『梟はまばたきしない』A・A・フェア,田中小実昌訳,ハヤカワミステリ文庫,1942→1979はこちら→http://d.hatena.ne.jp/hoshi-itsu/20080114