ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『ラットマン』道尾秀介,光文社文庫,2008,2010

 道尾氏のサスペンスミステリ。アマチュアロックバンドの練習中に起きたメンバーの1人が死んだ殺人事件にまつわる物語です。そのメンバーの1人である姫川亮という男が主人公なのですが、メンバーの1人がスタジオで起きた事件と言うことで、犯人はかなり限定的であり、容易に判断できるはずなのですが、作者は決定的なことを示さないことで、そしてそれはフェアであり、読者を幻惑させます。どんでん返しが2回あり、主人公の過去の事件そのものが新しい事件と結びつく展開がトリックになっているなど見事な物で☆☆☆☆というところです。

 私は道尾氏の作品から、不思議とアカデミックでないところが共通していることから、A・A・フェアのハイブリッドバージョンのような印象を受けます。舞台やキャラがフェアに似ていて、これが次々と道尾氏の作品を手に取ってしまう理由です。

ラットマン (光文社文庫)

ラットマン (光文社文庫)