フリーライターの柚木草平シリーズの長篇第4作目の作品。地味系の女子大生を主人公にすえた連続殺人事件を追う話で、柚木は主人公に依頼を受けるわけでもなく、フリーライターの立場で事件の真相を突き止める。
殺された女性二人は一見接点がなく、殺人方法も異なるが、主人公の女子大生は、同じ中学で同学年で、自殺とされた一人は自殺するような人柄ではなく就職も決まっていたことから殺人ではないかと疑うところから話が動きます。誰にでも起こりうる事件、そして少し意外な真相が小気味良くはまっていく良作です。このような作品の評価は難しいところで、☆☆☆★ですが、誰にでも勧めることができます。
この文庫の作者のあとがきが秀逸で、ハードカバーで出版されたときに担当編集者に、少し冷たい言葉(知りたい人は実際に文庫を読むとよいでしょう。たいしたことはありませんが)を投げかけられて、自信をなくし、しばらく仕事ができなかった、というエピソードが私としては考えさせられました。
しかし今回改めてゲラで読むと、「登場人物個々の書き分けも見事(自画自賛過ぎるか)だし、時代、風俗、テーマ等、すべてがバランスよく書き込まれています」と「相当の傑作ではないか」とまで思ったと述べています。このあたりに樋口氏が小説にあたって何を重要視しているかがわかり興味深いですね。
それに加えて、本書は必要最低限のことしか書かれておらず、非常に読みやすいです。おそらく、削って削って削りまくったんでしょうね。これぞプロの作品ともいうべき作品なのでした。
- 作者: 樋口有介
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2007/02/21
- メディア: 文庫
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