ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

2013年のベストと仕事のこと

 たまには統括しようと思うのですが、私の読書傾向は高校時代から毎年変わらないなあ、と嘆いていたら、社会人になってから読書時間が短くなったために古典を読まなくなったことに気づいて、さらに嘆きたくなります。本来は古典を読まなくてはならないのですが、もう頭がついていけなくなりました。哀しいことです。

 年末にかけて、まあ偶然なのですが、国内ミステリ10冊連続で読んでみました。時代も作家も異なってバラエティに富んでいたのですが、国内ミステリをこれだけ通して読んだことがなかったので、普段なら手を取らないだろうと思われる作品まで読むことになって、何というか改めて自分が何を目指すのかがわかったような気がします。

 さて、今年のベストなのですが、あまり充実した読書ができなかったように思います。以下はそのリストですが、もう一度読むなら何を選択するかというラインでピックアップしてみました。選んでみると昔の作品ばかりだ。亡くなった連城さんを読まなかったんですね……。 

『ナイルに死す』アガサ・クリスティー, 加島祥造訳,ハヤカワ文庫―クリスティー文庫,1937→2003
『桶川ストーカー殺人事件―遺言』清水潔新潮文庫,2000→2004
『マンハッタン・オプII』矢作俊彦ソフトバンク文庫,1985,2007
『刺青白書』樋口有介創元推理文庫,2000,2007

 そのほかに綾辻行人氏の作品が印象に残りました。といってもあまり読んでいませんが。改めて綾辻氏の作品を読んだときに書きますが、綾辻氏は日本ミステリ界において、「天才で特別な作家=巨匠」になっているのだなと感じました。これは島田荘司氏とは別ポジションです。ブックオフなど古本屋では綾辻氏の作品は100円に価格が下げられることがありません(ものすごい古びて汚れているものは除く)。

 これは、小さな現象ですが、綾辻はマニアックな作家で、ある一定数の綾辻氏にはまるマニアが存在し、彼らには必ず需要があることを示しています。おそらく、綾辻氏は晩年から死後に全集が編まれ、以後20年ごとぐらいに、繰り返し全集が出版される作家になっていることでしょう。

 ところで本日「出版物売り上げ減 約30年前の水準に」というニュースがありましたが、まあ毎年の風物詩で、なるほどこのように少しずつ認識から常態化していくのかなとも思います。私が出版業界に関わってから、十数年経ちますが、実感として1999年ぐらいをピークに業界そのものが縮小しているように感じます。

 その大きな理由は、やはりインターネットです。私はいわゆる情報を扱う書籍を制作しているのですが、近年、制作に当たってインターネットに頼ることが多くなりました。これは、何かの企画を立てるとき、情報の確認をするときなど、まずはインターネットで検索します。

 細かいことでは、一つの用語があって、どのように表記するのが正しいのか調べるときに、昔は辞典を引いていたのに、現在はインターネットで事足りてしまうのです。曖昧な内容でも、以前は調べることができないことはスルーして出版できていたのに、それができなくなってしまいました。

 このようなことを「書籍を購入する人」でしたら誰でも行っているのでしょう。その「書籍を購入する人」は調べる必要性を感じる度に書籍を購入していたはずです。しかしネット検索によって書籍を購入する必要性が減ってしまいました。この積み重ねが書籍の売り上げ減少に結びついているのでしょう。

 となると、早晩、出版業界では一部の能力がある人以外しか存在が許されなくなってしまうでしょう。私のようなB〜C級編集者はどのように生き残るのか。専門知識を蓄えるしかないのでしょうが、それも大変ですし……。それが来年のテーマですかね。今年も同じでしたが。