メグレ警部を主役としたミステリシリーズの中期にあたる作品。本作のような作品を読むと、メグレ警部シリーズは謎解きミステリの魅力にあふれているとは思えないのです。例えば、ペリイ・メイスン・シリーズが、謎解きが第一義に評価されているわけではなかったように、メグレ物も同じだと思うのです。警察小説というジャンルが確立されていなかったため、謎解きミステリの一つとされていたのでしょうか。
地方都市に住んでいるヴァランティーヌ・ベッソンという老婦人が、自分に用意された飲み物を飲んだ召使いのローズがヒ素で死んでしまった、自分を狙った殺人事件なので捜査してほしいと、パリのメグレを直接訪れて訴えた。興味をもったメグレは許可を得て捜査に老婦人の屋敷に行って捜査を始めたのだが……。
この後、城主のヴァランティーヌ・ベッソンの娘やその夫、義理の息子たちなどの関係者に聞いてまわるのですが、ここが分かりづらくて、例えば年齢ひとつとっても、しばらく読んでもよく把握できないなど、おそらくフランス語を読んでいると分かることが説明されていないのです。文章はシンプルにあるべきと考えれば理想的なのですが、翻訳になると抜け落ちてしまうことが多くあるのではないでしょうか。トリックそのものは、その人間関係から新たな人間関係が現れていくというもので、評価としては☆☆☆というところです。
- 作者: ジョルジュシムノン,Georges Simenon,日影丈吉
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/11/15
- メディア: 文庫
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