ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『書楼弔堂 破暁』京極夏彦,集英社,2013

 京極氏の「弔堂」という古書店を舞台にした連作短編集。「臨終」「発心」「方便」「贖罪」「闕如」「未完」の6編。

 舞台は明治時代。二葉亭四迷が『浮雲』を出版した頃。京極氏の作品は全部は読んでいないものの、初期作から中期までは読んでいる者としてですが、文体が講談調というのか、怪談調というのか分かりませんが、読者に語りかけるような文体が、いったいこの一人称は誰なんだろうと迷ってしまいます。作者なのか、「私」という一人称なのか、キャラクターの一人なのか。そのように読ませることは作者の企みなのでしょうが、読者は混乱するだけです。面白さが半減してしまいます。

 また、京極作品には三名しかいないのではないかと感じます。話している内容を違うものにしているだけで、キャラクターそのものが同じように感じるのです。京極堂シリーズはライトノベルのノリでしたから、さまざまなキャラクターが出て言いたようの思いますが、その後の作品ではどれも同じようにしか感じません。そういうわけで、☆☆☆というところです。歴史小説が好きな人でしたら、もっと愉しめるでしょう。

書楼弔堂 破暁

書楼弔堂 破暁