ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『別館3号室の男』コリン・デクスター, 大庭忠男訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,1986,1987

 コリン・デクスターの7作目の作品。なんと舞台は年末大晦日にホテル行われた仮装大会です。その優勝者が仮装したままホテルの一室で殺されたところを発見されたということで、これは日本のコミケなどでも流用できる舞台ですね。もう既にあるのかもしれませんが。

 オックスフォードのホテルの別館三号室で、ラスタファリー教徒の衣装のまま、頭から大量の出血を起こした惨たらしい死体をホテルの受付の女性が発見した。そのホテルでは前日大晦日に年越しパーティが行われ、殺された男はパーティの仮装大会の衣装のままだったのだ。警察は捜査を始めたのだが、なんとホテルの者は他の客を帰してしまったのだ。まずは宿泊人名簿を見て、偽名のまま殺された男と宿泊客の身元を探すのだが……。

 殺人が起こるのは43頁なのですが、そこまでは後に殺人の容疑者となる三組のペアがホテルの年越しパーティに参加するまでが描写されており、まるでわかりにくいアガサ・クリスティのようでした(いかにクリスティが偉大かがわかる)。この設定が巧みで、ホテルのパーティなので、みな本名を書かず、殺された者でさえ、身元がわからないのです。そこから警察は捜査することを余儀なくされ混乱してしまいます。

 かといって、本作は、謎解きミステリにはアンフェアともいえる、ある致命傷がラスト付近で判明するので評価は低く、☆☆☆★というところです。

別館3号室の男 (ハヤカワ ポケット ミステリ)

別館3号室の男 (ハヤカワ ポケット ミステリ)