1985年にNHKブックスから出版された書籍の文庫化。25年以上経っているのですが、中身はまったく古びておらず、内容の分かりやすさに感動しました(というかNHKブックスはそんな昔からあるのか)。
山鳥先生は神経心理学の大家で、本書は言葉・知覚・記憶の障害を分析することにより、脳の機能のしくみ、心のしくみがどのようになっていると思われるのか、現象面から示しているものです。神経心理学とは、あらためてどういうものか説明してほしいと言われると迷ってしまいますが、山鳥先生はまえがきで以下のように説明しています。
(中略)このような、脳損傷が引き起す多様な心理症状を脳損傷の部位や量と対応させて、心と脳の関係を探ってゆこうとする研究領域をわれわれは神経心理学と呼んでいる。(本書4頁より)
脳損傷の方々が、言葉の意味をつかむことができない現象、言葉の正確な意味はつかめないけど関連するものとして反応する現象から、言葉は単に単語を並べたものではなく、それには意味のまわりに意味をまとっていると語ったり、ある物のことを話されて、その単語の意味は分かるものの、どのような物であるかイメージできない現象から、物の名前とイメージを一致させて初めて「言語」になるのだろうと語ったりしています。
とにかく、これをイラストたっぷりの解説書にしてみたいと駆られる充実した内容でした。
- 作者: 山鳥重
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2013/06/21
- メディア: 文庫
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