ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

体験が感覚を変える――『日本人には二種類いる――1960年の断層』岩村暢子、新潮新書、2013

 『普通の家族がいちばん怖い』の岩村氏の1960年以前に生まれた人、1960年以降に生まれた人の生育・社会などの環境による「体験」が全く変わってしまったため、まったく異なる日本人のタイプが存在することを論理展開した本です。

 期待して読んだのですが、1960年以降はどのように変わったか、例えば[自宅出産→施設(病院など)出産][年長者優先の家→子ども中心の家庭][両親は見合い結婚→両親は恋愛結婚]などを丁寧に説明しています。

 しかし、1960年代以降生まれの私にとっては、ごく当たり前のことが書かれており、1960年以前のことがあまり書かれていないため、あまり適切な比較検討になっていないように思いました。

『「自由」という言葉をどう捉えるか人々に尋ねたところ、「‘60年型」は「何もしなくてもいいフリーな状態」を想像し、「旧型」は「やりたいことが何でもできる自由」を語って、互いのイメージが噛み合わないことに驚いたのである』(219頁「おわりに」より)という比較検討がもっと読みたかったですね。それは、まあ、次の新書になるのでしょう。

日本人には二種類いる: 1960年の断層 (新潮新書)

日本人には二種類いる: 1960年の断層 (新潮新書)