ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

アニメを作るということ――『風に吹かれて』鈴木敏夫,中央公論新社,2013

 最初に書店で見かけたとき、渋谷陽一氏による鈴木氏への『Cut』のインタビューをまとめたものか、『風立ちぬ』公開時にあわせて、なぜかロッキン・オンではなく、中央公論新社で発行されたもの。

 鈴木氏は宮崎氏、高畑氏との出会いから現在までの流れを吐露しているためか、ときおり青春記とも友情物語ともいえるものになっています。だから『かぐや姫の物語』は生まれたのだと。そこが少し胸をうたれます。

 鈴木氏のインタビューは、映画公開時に宮崎駿氏がインタビューを受けなくなってから、映画の宣伝のため、映画の説明をするために増えてきました。宮崎氏が『もののけ』か『ハウル』か、どの映画からインタビューを受けなくなったのか不明ですが。本書は、それらの鈴木氏のインタビューと重複するところがありますが、新しいことも渋谷氏にしゃべらされており非常に興味深いです。

 制作側になると、作りたいと思っていた100のアイデアが、予算、時間、技術、人材などの理由により十全に実現することができないこと、例えば「風立ちぬ」のエンディングなど二つの考えがあって、そのときは一つを選択したけれど、「それで良かったのだろうか」と迷っていること、一つひとつのシーンもどのようなプロセスを経てできあがっているか知っていることなどから、映画を楽しめない、理解していないかもしれないことが述べられています。

 また、『ハウル』『海がきこえる』の評価というか感想が意外でしたね。

風に吹かれて

風に吹かれて