2010年に原著が発行されたキングの第3中編集を日本版では分冊して発行されたもの。本書はその前編でキングの中短編2作「1922」「公正な取引」を収録。
「1922」は、タイトル通り1922年に、妻を殺して井戸に遺棄した農場主の男が罪を告白するお話で、殺人に至る過程、その後の男と息子の転落の過程が、リアルとスーパーナチュラル的な要素が絶妙に絡み合って、独特なホラーになっています。読んでる最中に何度も『シャイニング』やパトリシア・ハイスミス、『怒りの葡萄』が思い浮かびます。
余談ですが、この時代の小説や映画を現代の作家が作品化するときは、だいたいのものが『怒りの葡萄』を参考文献にしていますよね。よっぽどアメリカ文学で影響力があるんでしょう。
もう一つの作品の「公正な取引」もまあまあですが、「1922」が素晴らしく☆☆☆☆というところです。私は最近はキングを描写過剰で忌諱していたのですが、本書はそのようなことがなく、スムーズに読むことができました。長篇のような濃厚なストーリーではなくアレンジしやすいので、映画向きではないでしょうか。
- 作者: スティーヴンキング,Stephen King,横山啓明,中川聖
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/01/04
- メディア: ペーパーバック
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