ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『仮面荘の怪事件』カーター・ディクスン, 厚木淳訳,創元推理文庫,1942,1981 ☆☆☆★

 カーの中期後半のヘンリー・メリヴェール卿ものの作品。H・M卿が、奇術ショーを行うところが愉しい。

 〈仮面荘〉(マスク・ハウス)の当主で実業家のドワイド・スタナップは絵画をコレクションしていた。仮面荘は劇場をもっているほど大きな屋敷で、大晦日の毎年恒例のお祭りでは奇術師や漫画家などを呼んで近所の子どもたちを呼んでいた。

 その前夜、午前3時15分ごろ、その屋敷の中で大きな物音がしたので、宿泊客が食堂にいったところ、黒い布の覆面をしていた男が胸を突き刺されて倒れていた。そばには果物ナイフが落ちていた。男はエル・グレコの絵を盗みに侵入したらしく、絵をはがしている時に誰かに刺されたらしい。覆面をとると、刺されていたのは、絵の所有者で当主のドワイド氏だった。いったい何故ドワイド氏は絵を盗もうとしたのか? 何故刺されたのか? そして誰が刺したのか?

 1942年当時の捜査方法はどのようなものであったのかを十分に知っていないと、このトリックを暴くのは難しい。とはいえ、カーにしては、分かりやすいトリックということで、☆☆☆★というところです。

仮面荘の怪事件 (創元推理文庫)

仮面荘の怪事件 (創元推理文庫)