ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『最貧困女子』鈴木大介,幻冬舎新書,2014

 昨年の発行直後からネット上などで話題にあげられていた新書です。本書は「最貧困女子」を「セックスワーク(売春や性風俗)で日銭を稼ぐしかない」貧困女子をテーマにしたもので、その原因を「慎重」に解説しています。

 筆者は、低所得を前提に「家族の無縁・地域の無縁・制度の無縁」という「三つの無縁」を挙げた上で、「三つの障害」という「精神障害発達障害知的障害」から貧困に陥るとしています。

 三つの障害が三つの無縁につながるとしているのですが、この三つの障害を挙げずには、公的な福祉という解決の糸口にはつながらないためなのか、あえて示しています。もちろん筆者は福祉だけでは解決できる問題ではないとしているのですが。

 この最貧困女子が全体のなかで、どのくらいの割合で存在しているのでしょうか。非常に少ないように思いますし、しかし意外に多いという気がします。

 第一章では「マイルドヤンキー」「プア充女子」の解説をしているのですが、マイルドヤンキーはどのようにして幸せをつかんでいるかが肯定的に具体的に示めされていて、これはきわめて高度で強固なコミュニケーション・文化的システムだなと感じました。このシステムに馴染めないとつらいものがあるはずだし、そういう人は大勢いるのではないでしょうか。

 また読み進むについて、最貧困女子がセックスワークの底にいるということは、マイルドヤンキー、プア充女子というシステムには、セックスワークが生活していくためのシステム(≒収入)が前提になっていることに、自分が巻き込まれてしまっていることにも、読後、不可思議な感覚に陥ります。

最貧困女子 (幻冬舎新書)

最貧困女子 (幻冬舎新書)