ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

天才を描く――『[映]アムリタ』野崎まど, メディアワークス文庫,2009,☆☆☆★

 最近、派手ではないものの話題となるライトノベルを次々に発表し、SFでも評価を受けている野崎氏のデビュー作。私は、『本の雑誌』の若島先生の評価で気になりました。なんとなく自分の感性に合っている作家ではないかと。

 本書は、天才監督の創る映画そのものが人間に影響を与えるという意味で、やはり先行作品として『フリッカー、あるいは映画の魔』を思い浮かべますが、雰囲気が似ています。5時間や人によっては50時間など読ませ続ける、非常に魅力的な絵コンテを描く天才が、主人公の大学生の男性をを主演にして映画を撮りたいと、これも魅力的なカメラマンから誘われるところから始まります。いったいその映画はどのようにできあがるのか……。

 とにかく読者を裏切ろうとする展開、そして優秀な江戸川乱歩賞作品のような、丁寧なまとめ方など、描写など少し物足りないところがありますが、デビュー作にしては面白い作品で☆☆☆★というところです。