ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

まさかの法廷物の名作――『試行錯誤』アントニイ・バークリー, 鮎川信夫訳,創元推理文庫,1937,1994,☆☆☆☆★

 本書はイギリス黄金期の作家の1人であるバークリーの代表作といわれています。私は本書が分厚いため、購入したまま、ずっと積ん読のままだったのですが、まあひと月ぐらいかかっても良いから、毎日少しずつ読み進めようと、何の予備知識もなく手に取りました。
 てっきり『毒入りチョコレート事件』のような作品と思っていたのですが(『毒入り』が『試行錯誤』というタイトルでもピッタリですよね)、冒頭の主人公が動脈瘤で末期の宣告を受けて、有効に命を使うために、役に立たない人物の殺人を行うという、ゲーム性豊かな、もしくは現代性豊かな、シンプルな設定にニヤニヤさせられてしまいます。主人公が殺人を行って、旅行に出たところ、警察が誤認逮捕をしてしまい、自分が殺人犯であると警察に訴えるものの、証拠がないとけんもほろろに却下されてしまいます。
 その後は、裁判を起こし、一転法廷ものになり、最後はお得意のどんでん返しがあるという、盛りだくさんの内容でした。名作といわれているだけあります。というわけで、☆☆☆☆★というところです。翻訳も平易で読みやすいものでした。

試行錯誤 (創元推理文庫)

試行錯誤 (創元推理文庫)