ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

サラリーマンの夢――『神様からひと言』荻原浩,光文社文庫,2002,2005

 荻原氏の作品は、『ハードボイルド・エッグ』『サニーサイドエッグ』が既読でそれぞれ面白かったのですが、何故か他の作品を手に取ることがなく、スルーしてきました。本書は、サラリーマンマンガは多くありますが(あれ、最近は少なくなっている? 具体例が出てこない)、サラリーマン小説はあまり読んだことがなく、「半沢直樹シリーズ」が良かったものですから、手に取ってみました。

 大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げられていた……。

 本書には、キャラクターと生きているという充足感を感じる珍しい作品です。これは滅多にあるものではありません。それに加えて、業界ものであり、一種のサクセスストーリーにもなっていて、人生を感じさせてくれます。でも、平のサラリーマンが創業者を継ぐ人と知り合いになるなんて、『釣りバカ日誌』からのサラリーマン物語の王道かも。そのくらいが夢なんですよね。

神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)