カーの第3作目の作品。パリの名探偵バンコランを主人公にした作品で、バンコランが若年であるためか、カー独特のアクが少なくて読みやすい作品。しかも道具立てがわかりやすすぎて、江戸川乱歩や横溝正史にもろな影響を与えたようにも見えます。
ベルギーの大富豪のジェローム・ドオネイが髑髏城で起きた、名優のマイロン・アリソン殺人事件の捜査を探偵のバンコランに依頼した。髑髏城は魔術師で名をはせたメイルジャアが莫大なコストをかけて大きく修繕したライン川沿いにある古城であった。
ジェローム、マイロン、メイルジャアは友人で、マイロンはその髑髏城のライン川を挟んだ向かいに別荘を建てたほどであった。そのメイルジャアは十数年前に列車で移動中に失踪してしまったあと、ライン川で遺体で発見された。自殺かと思われたが、ジェロームはそうではないと思っていた。メイルジャアの死後、メイルジャアの指定でジェロームとマイロンのふたりが髑髏城を相続した。バンコランは事件の内容を全部聞くまでもなく、依頼を引き受ける。
「(省略)……しかし、仮説をたてる以上は、あの狂気めいた異常なできごとや、だれの頭にも理解できるように説明してみせる義務があります。第一に、なぜ被害者のからだに火を放って、人目を驚かせる必要があった? 第二に、なぜ番人の死体を、殺害された数日後になって、くさりでつるし上げる必要があったのか?」(145頁より)
雰囲気や謎は非常に良いのですが、トリックはあまりうまくなく、あれだけそろえた道具立ては何だったんだという感じもあって、☆☆☆★というところです。
- 作者: ディクスン・カー,宇野利泰
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1959/07
- メディア: 文庫
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