ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『刑事さん、さようなら』樋口有介,中公文庫,2011,2013,☆☆☆★――タイトルが怖い

 樋口氏の第65回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)候補作。タイトルがちょっと変で気になっていましたが、読後になると、後で内容を反芻できる、なかなかよいタイトルだということがわかります。おまけにカバーイラストも同じ効果を与えている、いいイラストです。

 とにかく描写がうまく、最小限の描写で、生き生きとしたキャラクターとなっています。捜査側の警察バージョンと西川口の焼肉店バージョンが交互に語られるのですが、この西川口の焼肉屋バージョンが私は何も知らないにもかかわらず、店内の雰囲気やどのような人物がいるのかが眼前に浮かんでくるほどです。

 謎やサスペンスを追いかけたミステリと言うよりも、奇妙な味のテイストが強く、これは考えてみれば『ピース』と同様のものですね。内容が忘れがたく、☆☆☆★というところです。私にはもう少しミステリ的な要素が欲しかったところですね。