ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『死のドレスを花婿に』ピエール・ルメートル, 吉田恒雄訳,文春文庫,2009,2015――次作で作者の本当の力量がわかる

 『その女アレックス』の作者の第2作目の作品。1作目ではなく2作目が出版されたのは、解説によると、本書がすでに柏書房より出版されていたことから、それを文春が版権購入したもので、翻訳をそのままかチェックした上で文庫化したもののようです。私は『その女アレックス』の素晴らしさに感動したところで、本書が書店に並んでいたので、そのまま購入。文春の担当者が、本書を読んで感動して、同じ作者の新作を探して『アレックス』を出版、そしてベストセラーという物語に、私は乗りたかったんですよねえ。

 結論から言うと、帯の「『その女アレックス』の原点!」と書かれてあるとおり、ストーリーはそのままではないけれど、ストーリーの流れがスムーズでないこと、しかし極端なキャラクターや構成、視点を用いたギミックなどが同じで『アレックス』の習作のように感じられた。というところで☆☆☆★である。しかし、きちんと書き直せば、『アレックス』ぐらいの評価を受けるぐらいのネタと構成だ。

 この作者が、『アレックス』が奇跡なのか、『死のドレス』ぐらいの実力なのか、それは次作でわかると思う。『アレックス』には、あえて行われたと思われるフェアプレイではないところも見られたので、本書がスタンダードのような気がする。そうだとすると、残念だけど、フランス作家はジャプリゾなど、そのようなパターンが多いので……。

 フランス作家と言えば、アルテの翻訳が途切れているけど、何故なんですかねえ。おそらくは出来がよくないので、訳者、出版社が手を引いてしまったんでしょうね……。

死のドレスを花婿に (文春文庫)

死のドレスを花婿に (文春文庫)