hoshi-itsu’s 本にまつわるblog

「ほしいつ」です。海外ミステリが中心のブログです。下書きがなくなってしまったのが悲しい……。

『空飛ぶタイヤ』池井戸潤,講談社文庫,2006,2009

 池井戸氏の「2002年に発生した三菱自動車工業三菱ふそうトラック・バス)製大型トラックの脱輪による死傷事故、三菱自動車によるリコール隠しなどを物語の下敷きとしている」(ウィキペディアより)フィクションで、テレビドラマ化はテーマがテーマだけに広告に依存している地上波ではなされず、WOWOWでなされましたが、他の池井戸氏の作品同様、異常といってもよいほど面白く、正に巻を置くにあたわず作品です。

 この面白さはどこからくるのか、考えなくてはなりません。それは一つではなく複合的なものとは思いますが、間違いなく他の作品とは決定的に異なります。まずは読みやすい文章、わかりやすいキャラクターであること、実際の事件を元にしているため読者にリアルに感じることなどがありますが、それでしたら、他の作品にもあるでしょう。

 なんといっても際立つのが、ストーリーの流れ・展開のうまさです。多数のキャラクターが登場してるのですが、それらを上手く配置して、主人公・サブ主人公級のキャラクターが、苦い体験をしたり、危機に陥ったりしたら、その後苦境を救うような一縷のチャンスが現れたと思ったら、それが無駄になるなど、とにかくジェットコースターのように上げたり下げたりして、続きが気になるようになっているのです。例えば、主人公が自動車会社を糾弾して溜飲を下げたと思ったら、それが警察捜査の邪魔になったりします。

 また、悪役のキャラクターの造詣のうまさが挙げられるでしょう。よくみられる嫌々で巻き込まれて悪役になってしまうキャラは、確かにリアルで読者が感情移入しやすくなるのですが、悪を叩きたいという欲望を半減させてしまいます。池井戸氏の小説では、悪役は悪役らしい言動をして、しかもリアルなのです。これがなかなかできません。

 他には、本書に特徴的ですが、組織の書き方でしょう。組織とはどういうものか、その中でどう立ち回っているか、会社の理恵kと自分が属する組織の利益が反する場合、どうしても自分に対して利益がある組織を優先しがちですが、そのようなキャラ造詣が上手すぎる。そのキャラがそうするのは仕方がないと、読者が思ってしまうほどにです。

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)

空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)