ディーヴァーは苦手だ。面白いことは面白いのだけれど、どうも、その面白さを十全に味わえていないというか、自分の中で上滑りしている感じがする。キャラクターのせいだろうか? どうしても主人公のライムに魅力を感じない。サブキャラクターも同じだ。それでも、ディーヴァーより読者を騙すことを目的をもち質を保っている作家は少ないので、手には取る。というわけで全作品ではなく評判作だけになる。本書はそんな作品の一つだ。
人質立てこもり殺人事件で、閉鎖された建物に警察が飛び込むと、犯人は消えていた。プロファイルからイリュージョニストが犯人ではないかと推理するライム。このようなイリュージョンができる人物は限られているので、少しずつ絞られていく。そこでディーヴァーは犯人とライムを直接対峙させる。この意表の付き方が面白い。そして犯人の消え方が、まるで怪人二十面相のようで、昔の江戸川乱歩を思い出させてくれる。海外のミステリでそんなことがあるなんて、それだけでも本書の価値はある。
前半は犯人捜し、後半はシリアルキラーの犯人対探偵で読み応えあります。ラストまでどんでん返しに気づかずやられた感をいただきまして、☆☆☆★というところです。
- 作者: ジェフリーディーヴァー,Jeffery Deaver,池田真紀子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 文庫
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