ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『髑髏の檻』ジャック・カーリイ, 三角和代訳,文春文庫,2010、2015

 前作までの私のカーリイ作品の評価、解説の千街氏の本作の評価の少なさ、各書評からいって、本作はあまり面白くないのかもと今回はスルーするかと判断していたのですが、たまたま書店で見かけてしまって、他にあまり食指が動く作品もなかったので、手に取った次第。

 休暇中にケンタッキーの山中に赴いた刑事カーソンは、携帯電話に女性の声で助けを求める通話を受けた。導かれていくと山小屋の中で惨たらしい遺体をみつけた。警察に捕まったが誤解をといた後、警察にジオキャッシングというリアル宝探しサイトに、奇妙な記号と座標が投稿され、そこにはトラックに押しつぶされた遺体が発見されたという。地元の警察に協力を要請されたカーソンだが、さらに同じような遺体が発見される。一体犯人はどうしてこのような予告と殺人を行うのか?

 相変わらずクリスティのような予告殺人と、サイコサスペンスミステリの展開があって、犯人は犯人なりの論理で殺人を行う話です。しかし結論からいうと、あのカーリイの作品と期待しなければ、そして期待しないで読んだのですが、傑作というわけではないけれど、伏線もけっこう回収されていて面白かったのです。あの記号は何かしらの意味があるのだろうなあ、と期待していましたが、なかなかのくだらなさ(ほめ言葉)で、☆☆☆★というところ。謎解きを期待しすぎるなど、ちょっと私が勘違いしたのかもしれません。

 それにしても、カーソンは専門職種らしくありません。専門職らしい思考や行動が見られません。比較的安易な行動をとっているような気がします。具体的に挙げてみたいところなのですが、一つ一つの行動が、いうよりないのが残念です。謎解きをする頭の良い刑事or探偵というだけです。そこに違和感を感じます。作者が専門職というものがどういう思考回路をもっているか、体得していないのではないでしょうか。

 しかし、もう既に、原著は11作も出版されているようです。あまりにも遅すぎる。年2冊のペースにして、原著に追いつくようにしてもらいたいものです。

髑髏の檻 (文春文庫)

髑髏の檻 (文春文庫)