ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『出口のない農場』サイモン・ベケット, 坂本あおい訳,ハヤカワ・ポケット・ミステリ,2014,2015

 この著者の好評を得ている「法人類学者デイヴィッド・ハンター・シリーズ」は知りませんでした。本書は、そんな著者のノンシリーズで、サスペンスミステリ。

 冒頭からイギリス人の若者のショーンがフランスで何者からか逃亡するところから始まります。森に逃げ込んだところ、動物用の罠にかかってしまう。目を覚ますと、農場の中の家で介抱されていた。その農場では、年の離れた姉妹とその父親が住んでおり、その長女のマティルドに罠で負傷し歩くことが困難になってしまったショーンは、世話になっている内に、その農場にとどまることにする。その姉妹、ショーンが農場にいることを許さない父親は、農場の外とは全く関わりのない自給自足の生活をしていた。ショーンが農場外に出て行くことを引きとどめる姉妹、獰猛な猪豚を多数家畜として育てている父親。ショーンはそのように生活していった家族の秘密を見つけてしまうのだが……。

 農場シーンとイギリスのシーンが、交互に語られていくのですが、時系列が一本であること、視点がぶれていないことなどから、非常に読みやすい作品です。登場人物が少ないのもグッド。とはいうものの、これがキングだったらもっと面白いだろうなあと感じさせてしまい、またミステリ的なギミックが予想の範囲で、☆☆☆★といったところ。まあ、つまらないわけではないので、暇つぶしに読むにはもってこいだろう。