先頃亡くなられた小鷹氏と作家の逢坂氏のハードボイルド小説と映画についての対談本です。映画のところはすっ飛ばして、小説のところだけ読みました。このお二人ですからハメットの話ばかりでした。
翻訳作法のところが面白かったですね。エルモア・レナードの「小説作法十則」を『ヴィンテージ作家の奇跡』から孫引きしているのですが、「1.作品の冒頭に天気の話は持ってこない。2.プロローグは避ける、3.saidを修飾する副詞は決して使うな」など、感嘆符、使ってはいけない言葉、方言、描写、シーンの削り方などを紹介しています。
それを肴に小鷹氏は「ハードボイルド翻訳作法三原則」として、1.彼、彼女という代名詞を使わない、2.感嘆符の?を使わない、3.感嘆符の!を使わない、と話しています。うーむ、なるほど。
それにしても出版社の人間として気になるのは、本書はどのくらい売れたのか、ということ。対談して音声を文字起こしして原稿を作るわけですが、マニアがきちんといて、それで利益が出るんでしょうねえ。
『ヴィンテージ作家の奇跡』は確か『ミステリマガジン』に連載されていたものですね。どんどん古い作家は記憶から失われてしまうので、こういう原稿を残しておきたい気持ちはわかります。
あと映画のパートで杉江松恋氏のペンネームの由来が紹介されていましたが、私はてっきり『I amマッコイ』からでいいペンネームだなと思っていたのですが、違っていたのにザンネン。『I amマッコイ』は暴走族のヘッドが性格の良い暴力男が主人公で、めちゃめちゃ面白いギャグマンガだけど、今は手に入れるのは難しいんですね。ザンネン。