野崎まど氏の(おそらく)5作目の作品。野崎氏の架空の設定の中でアクロバットな論理展開の後にリドルミステリに落ちつくという特徴があります。さらに、とぼけた感のある非常に特徴的なキャラクターとギャグが備えてあり、決して重くはならない作風です。ちなみにその特徴は酒見賢一氏に似ていると思います。本書もそのような作風の一つで、非常に面白いです。ミステリ好きのヒトは一作目から順序よく読んでみることをお勧めします。
新しく小学四年生になった理桜(りざくら)は、さなかという昨年の三学期から転校生が登校してきていないので、自宅を訪ねてくれないかと頼まれた。親御さんから同級生が訪ねてきてもらえないかと言われたらしい。理桜と「ややや」と柊子(ひいらぎこ)はさなかのマンションに訪ねると、さなかだけがいて、案内された。
さなかはすでに義務教育を終えて大学を卒業し数学者として社会人になっているので、改めて学校へ行かなくてもよいという。しかし理桜はさなかに負けまいと、学校は友達をつくるところで、さなかには友達がいないのではないかと話す。友達に興味と持った、さなかは学校へ行くことを約束するのだが……。
ここまでで序盤で、コメディタッチで話は進んでいきます。さなかは友達の意味を探っていくわけで、その結論にはなるほどと思わせるものがあり、さらにその後には、その世界をつくる仕掛けを受けることになるという、訳のわからない展開なのですが、非常に理詰めで哲学的なSFの仕掛けの魅力にあふれています。