ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『時計館の殺人〈新装改訂版〉(上)(下)』綾辻行人,講談社文庫,1991,2012

 綾辻氏の「館シリーズ」の第5作目の作品。第1作目から工夫を凝らしていましたが、本書でもさらに新味と工夫を加えています。

 鎌倉にある統計屋敷――日本有数の時計メイカーの前会長・古峨倫典が建築家・中村青司に設計を依頼した館で、通称「時計館」と呼ばれていた。そこに超常現象を扱った雑誌の取材で新米編集者の江南孝明は訪れることになった。その取材には、霊能者や大学の超常現象研究会のメンバーも同行している。取材を始めると、時計館に閉じ込められ、霊能者が失踪し、連続殺人が起きた。

 本書で、日本作家推理協会賞を受賞していますが、当時は、1989年ぐらいに新本格派と呼ばれる若い作家群が次々と作品を発表して、謎解きに好意的な書評家以外は否定とはいえないまでも、様子見といった感じでしたが、年末のミステリベスト10などでランキングされるようになるにつれて、徐々に受けいられてきたようになりました。受賞は確か『霧越邸』との合わせ技一本のような雰囲気もあったように思います。また、売り上げが伸びてきて出版社としても無視できなくなったのではないでしょうか。

 というわけで、私は本作に期待したのですが、前4作と比べると、いささか退屈でした。これは、本書の目的である謎解きと幻想の融合が私の好みとフィットしなかったからでしょう。というわけで、☆☆☆★というところです。

時計館の殺人<新装改訂版>(下) (講談社文庫)

時計館の殺人<新装改訂版>(下) (講談社文庫)