ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録』三木一馬,KADOKAWA,2015――エンタメ編集者のビジネス書

 この頃、編集者本の出版が増えているような気がします。あれとかこれとか……(すでに購入しています)。そんななかで本書は、電撃文庫でヒットを飛ばしているスター編集者の編集術をまとめたものです。

 私の仕事内容とは異なりますが、少しでも参考になればなあ、と思い手に取りました。つまり、ビジネス本としてです。

 最近興味をもっているのが、サラリーマンとは何なのか、ということなんですね。書店には膨大なサラリーマンのためのビジネス書が並んでいます。最近までは自分には関係ないものとしていたわけですが、仕事量が膨大なものになり、しかも細かいチェック作業が次々に入ってくると、早く作業を進めるにはどうしたらよいかを考えなくてはなりません。

 自分の方法では遅いのはわかりますが、それに変化を与えるためには自分自身に自分なりのパラダイムシフトを起こさなくてはならない。それには、他の本を読んで行動するのが効率よいのです。しかし、これも一冊だけでは効果がなく、多数の書籍を読んだ上で、自分の脳のクセやライフスタイルの偏りに、フィットするものをチョイスすることが、大切なんだということがわかりました。

 さて、本書ですが、小説というか物語において、『家訓』を決めることが必要であること、その『家訓』の決め方は自分の『やりたいこと』にする、そうすれば最後まで一方向で迷うことがなくなる、という考え方は、個人でもチームでも、物づくりをするためには共通していると思います。ここで『家訓』という言葉を選ぶのが、うまく運用するコツなのでしょう。

 私は、主に実用書を作成していますが、書籍におけるテーマを編者・著者に決めてもらいます。その後に目次を完成させるのですが、そのテーマがきちんとしたオリジナルなものであれば、目次も自ずからオリジナルになります。このテーマを決めるには、小説では『やりたいこと』としていますが、実用書でも同じです。そうしないと詰まらない本になってしまいます。

 あと他の会社がどのような組織の在り方や方法で動いているかも参考になりました。電撃文庫編集部では新人編集者は最初の一年間を先輩編集者のサブにつき、打ち合わせや会議に参加していると書かれていましたが、それは羨ましかったです。やはり、人は研修で一括してマニュアルを教えるのではなく、さまざまな場面や立場に参加することによって、教えられ成長します。私のところも余裕がなくなって、そういうことができなくなってきましたが、それが組織として終わりの始まりなんだなと感じます。

面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録

面白ければなんでもあり 発行累計6000万部――とある編集の仕事目録