ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『2』野崎まど、メディアワークス文庫、2012――ロジカルな壮大なホラ話 ☆☆☆☆☆

 本書は何の予備知識もなく読み始めたのですが、野崎まど氏のとりあえず第1期の最後といえる作品でした。傑作です。今までの野崎氏の作品を伏線として、次第に、そしてたたみかけるように、ある壮大なホラ話となっていく様は、快楽としかいいようがありません。欠点と言えば、それを味わうためには、『アムリタ』からすべての作品を読まなくてはならないことだけです。

 本書は、今までの野崎作品と同様に、作品内でのロジカルな展開から、最後はSF的なオチへと向かいます。一見、非常に説得力があるように書かれているのですが、なぜ、そうなるのか、というと説明されていません。しかし、読者はその論理に連れて行かれてしまいます。これは、なかなかできることではありません。非常に限られた作家がもつ才能です。

2 (メディアワークス文庫)

2 (メディアワークス文庫)