ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『その雪と血を』 ジョー・ネスボ,鈴木恵訳,ハヤカワ・ミステリ 1912,2015,2016

 昨年に翻訳されて書評で評判が良かった作品。巻末の作品リストによると、この作者は17作品出版しており、そのなかで6作品が翻訳されているのですが、主に集英社文庫だったためか、私は知りませんでした。書評などを読んでも、ピンと引っ掛かるものがなかったのでしょう。今回は、ポケミスでの出版だったということ、年末のベストランキングが良かったため、こうして手に取ることになりました。

 ――この出版社によって、小説や書籍の内容の質に違いがあるのかという課題はいずれ考えたいと思います。大きくて歴史ある出版社だからといって質の高いものになるのか、ということです。

 内容はというと、主人公のオーラヴ・ヨハンセンは殺し屋で、麻薬業者のダニエル・ホフマンに雇われてきた。ある時、オーラヴはホフマンにホフマンの妻コリナ・ホフマンを押し込み強盗に見せかけた殺人するよう依頼した。しかしオーラヴは美しいコリナを見張っているうちに気に入ってしまった。そんななかコリナには定期的に家を訪れる若い男がいた。愛人と判断したオーラヴは、その男を銃で殺害した。その報告をホフマンに電話で報告したところ「俺の息子を殺したのか?」と告白を受けた。ホフマンに命を狙われると思ったオーラヴは失踪を図る。この後、追いかけっこが始まる――。

 ミステリというよりは、サスペンスやスリラー小説で、謎解きの要素はありません。フィルム・ノワールの系風を継いでいます。シンプルで緊密な文体、シンプルなストーリーを読ませる運びではありますが、もうちょっと謎解き的な要素がほしいというとこで、☆☆☆★ですね。ただ短い小説なので、あまり時間がない人は手にとっても良いかなと思います。