ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部』酒見賢一,文藝春秋,2017ーー孟獲戦は俺TUEEE系の元祖かもしれない

 酒見版・諸葛孔明の最終巻。益州南部の平定と北伐、そして孔明の死を記しています。とにかく面白いのですが、最初から比べるとちょっと真面目に語ってしまっています。

 本書を読むまで、孔明が戦下手だったというのは気が付きませんでしたね。それまでは負け知らずだったからなんでしょうけど、確かに北伐は不思議がつくほど成功していません。魏との大きな戦力差、蜀の人材の少なさが強調されていたので、ごまかされていたんでしょうかね。

 ところで、孟獲との戦いは読んでいる間中、「あれ、この安心感・爽快感は最近どこかで味わったことがあるぞ、どこだっけ」とハテナマークをつけていたのですが、あとから考えてみると、強者が弱者を徹底的にたたく、という意味で、これは俺ツエー系の元祖ですかね。その「どこか」は、たぶんネット小説を知っておこうと思って読んだ『転生したらスライムだった件』ですね。

 あと、孟獲戦といえば、傷追い人ですね。最後のほうで、孟獲戦のオマージュを繰り広げていたんですよねえ。あれも良かった。

 最後に、酒見先生には、二年に一冊ずつぐらい、テーマは何でもよいので、書いていただくことを切に願っています。

泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部

泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部