ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『13・67』陳浩基,天野健太郎訳,文藝春秋,2014/2017ーーどんでん返しが冴えわたる短編群

 昨年の海外ミステリランキングの上位に挙げられた中国(香港)警察ミステリ。

 ロー警部が関わる事件をもとにした6つの短編(というよりも中編)を2013年から1967年までさかのぼって収録されています。その6つの短編がそれぞれ謎解きミステリが濃く一つの短編の半分ぐらいが謎解きで、さらにどんでん返しが複数あり、非常に練られていて面白いです。瑕瑾があるとすればフェア度が少し少ないことと、人物の名前が憶えづらいのでルビをうってほしかったですね。しかし世評の評価が高いのもうなずけます。

 文体も海外ミステリに影響を受けているようで、一部は長すぎるような感じもしますが緻密な描写がされています。キャラクターの行動のみを描写をしながら、街の説明をしているところなど、エド・マクベインのようでありました。

 というわけで、☆☆☆☆★です。やはり最後の短編の位置づけの意味が素晴らしいですね。これ以上の作品を書くのは難しいのではないでしょうか。 

13・67

13・67