私立探偵ジョン・タナー・シリーズ第13作目の作品。あと残りが少なくなってきました。本シリーズは、謎解きと意外な犯人がきちんと盛り込まれていて、ミステリとして正統派の貴重なシリーズだと思います。本書もまさしくそのような作品です。
タナーの入院先で一緒にリハビリを受けた25歳の女性のリタ。生まれつき脚の障害をもっていたが進んだ手術より健常とわからないように回復していた。リタはイチゴ農場で働いており、その退院後、刺殺された。タナーは依頼人のいないまま、強大な農場主が支配する南の小さな町で犯人を捜す。しかし、タナーはリタの昔からの友人で看護師のモナに秘密を暴くなと忠告を受ける。
モナはドアを閉めると、かすかにささやき声でいった。
「わたしたちをそっとしておいてちょうだい、ミスター・タナー。ハシエンダス(舞台となっている地名)には、暴かないほうがいいことがいろいろあるの。誰も知らないほうがいいことは、知っている人間までがお墓まで持っていくのが一番なの。そうさせてちょうだい、ミスター・タナー。時間がたてば、秘密は埋もれてしまうんだから」(70~71頁より)
リタは秘密を持っていたらしいと知るタナーは容赦なく暴こうとするのですが、婚約者、幼馴染、婚約者の家族などがそれを阻止する。また、探っていくうちに、嫉妬、死出生の秘密などさまざまな殺人の動機が考えられるようになる。
また、前作でもそうでしたが、この時代のアメリカの問題点を舞台にしているところなど、ああ、そういえば、こんなことが問題になっていたっけ、思い出します。ただ単なる歴史になっているだけで、現代につながっていないところが残念ですが…。
後半、タナーは、関係者にカマをかけて、自白を引き出そうと解決を図りますが、それを3回行います。この3回ともが絶妙で、どんでん返しになっています。というわけで、☆☆☆★というところです。
憎悪の果実―私立探偵ジョン・タナー (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: スティーヴングリーンリーフ,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/03/15
- メディア: 新書
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