ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『天使と罪の街』マイクル・コナリー、古沢嘉通、講談社文庫、2004、2006ーー連続殺人、暗号、捜索、犯人の追跡など盛りだくさんのエンタテインメントだけど

 刑事 "ハリー・ボッシュ" シリーズ第10作目の作品。コナリーは、作品順に読むのが難しく飛び飛びになっていまっています。

 コナリーの作品については、以前から書いていますが、ストーリーもキャラクターも面白いものの、わたしは割と作品としては否定的でなんです。人には面白い小説として勧めやすいのですが、心に残る作品かというとそうではない。なんかテレビドラマ的なんですよね。

 どうしてそう思うのか、つらつら考えてみたのですが、キャラクターの心情と行動が一致しているからではないかと思うんです。人というのは、このような環境や状態があって、こう思って、合理的にそのとおりに行動するわけではないんですよね。つまらない欲や気がかりなことで行動を決めることもある。また、もっと子どもの時のトラウマや親との関係で理不尽な行動をする。そういうのが少ないんです。

  本書も冒頭の殺人か自殺かの謎から、暗号の提示、犯人の設定、捜索の方法、そしてクライマックスまでスキがなく、河の流れのごとく読者を操り、最後までハラハラさせながらつれていきます。そのような小説はあまりなく、素晴らしいと思います。しかし、しかしなんです。例えば、もっとヒーローとヒロインに弱点や悪意をもたせてもいいのではないでしょうか。ポアロやクイーンにだってあります。ましてやリアルをテーマにした警察小説なのですから。

  というわけで、☆☆☆★というところです。すいません、文句しか書かなくて。

天使と罪の街(下) (講談社文庫)

天使と罪の街(下) (講談社文庫)

天使と罪の街(上) (講談社文庫)

天使と罪の街(上) (講談社文庫)