ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『悪の教典』貴志祐介、文春文庫、2010、2012ーー一気読みできる超弩級のエンタテインメント小説

 私は貴志氏の作品はあまり合わないようで、あまり読んでいません。本書もベスト1を取るくらいなので気になってはいたのですが、どうも自分には関係ない作品のような気がして、今の今ままでまったくノー知識で読んでしまったら、あらあら驚き、こんな超弩級のエンタテインメント小説とは思いませんでした。こんな昏い主人公できちんとクライマックスを作り爆発させるとは。

 大藪春彦の『蘇る金狼』などの作品群を思わせる主人公。考えてみれば、『黒い家』『青の炎』『硝子のハンマー』と続く集大成といっていいのかもしれません。サイコパスで、無慈悲で、コツコツ準備して犯罪に備えるキャラクターと言う意味では通底しています。

 クライマックスは、やはり『銀と金』を思わせ、ドキドキしました。コミック調だけれども、主人公の滑り台ぶりも、なんとなく犯罪を犯すときはこんなものだというようなリアリティがあります。というわけで、評価高く☆☆☆☆★というところです。 

悪の教典 下 (文春文庫)

悪の教典 下 (文春文庫)

悪の教典 上 (文春文庫)

悪の教典 上 (文春文庫)