ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『最終章』スティーヴン・グリーンリーフ、黒原敏行訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2000、2002ーー熱狂的な愛読者をもつ作家が爆弾で襲われる

  私立探偵ジョン・タナーシリーズ全14作中14作目の作品でラスト。原著は2000年ですからなんと19年前の作品ですね。これで新作が読めないとなると厳しいですね。

 このシリーズは、ネオ・ハードボイルド小説として始まりながら、次第に普通に私立探偵+謎解き小説としてバランス良く成り立つものとなっています。これが物足りないという人もいるでしょう。本作もそのとおりの作品で、オープニングから謎解き要素が満載でニヤニヤしてしまいます。考えてみれば、この作風の変化はディック・フランシスに似ているかも。

 アメリカのロマンス小説でベストセラー作家のシャンデリア・ウェルズのもとへ、作家活動を止めるよう脅迫状が届いた。シャンデリアは友人の紹介でタナーに身辺警護を依頼した。シャンデリアの成功とその過程において、脅迫状候補が複数認められた。元夫、盗作をサイン会で叫ぶ同業の作家の卵、書評家などで、タナーは一人ひとりあって突き止めていくのだが、新作の小説を上梓したシャンデリアのサイン会の帰りの自動車に爆薬が仕掛けられ爆発し、元FBIのボディガード兼運転手が死亡、シャンデリアは大やけどを負い意識不明に陥ってしまう。責任を感じたタナーは捜査を始めていくのだが、自分に対しても危険性を感じるようなことが起こる。いったい犯人は誰なのか? 事件の凶暴性から推し量るとシャンデリアの狂信的な愛読者なのか?

 というわけで、中途の展開などまさに王道といえるものであり、中途から読者の予想を裏切る王道から外れる展開ながらも平均的な面白さを保証する作品ということで、☆☆☆★というところです。

 しかしまあ、これが20年前の小説だからね。Amazonやネットの書評を気にしていたり、サイン会・朗読会を開催していたり、狂信的な愛読者がいたり、本当に現代と変わりませんね。アメリカの出版事情が垣間見えるのもよかったですね。

最終章 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

最終章 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)