ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『漫画原作者・狩撫麻礼 1979-2018 《そうだ、起ち上がれ!! GET UP . STAND UP!!》』狩撫麻礼を偲ぶ会、双葉社、2019ーー土岐が探偵事務所を開く理由は

 Amazonでおすすめされるまで気が付かなかった狩撫麻礼氏の追悼本で、ファンならばまったく損をしない充実した編集になっています。ちょっとこれ以上の追悼本は思いつかないくらいです。

 かわぐちかいじ江口寿史松森正大根仁のインタビュー・追悼の文章ががめちゃくちゃ良かった。

 私は狩撫氏といえば、『ハード&ルーズ』でした。もちろん『ボーダー』も「アクション」の連載当時から読んでいましたが、蜂須賀のあまりのスーパーマンぶりにちょっとついていけなかった。あちら側、こちら側という概念は影響を受けまくっていましたけどね。『ハード&ルーズ』ぐらいの生き方が私の性に合っていました。今でもそうですね。完全に自分と同化していたというくらい影響を受けまくっていました。「人は感動をしたら道を踏み外す」「人と半音階ずれているんだ…」などですね。

 その『ハード&ルーズ』では、土岐が探偵事務所を開くに至った理由がかわぐち氏の要望だったということ、また一匹狼に戻ったのが狩撫氏の意思だったということが意外でした。私としては、土岐が探偵事務所を開くとき、「確実にどんずまっていた」「これもシンクロニシティ」であると理由づけていることが好きだったんですよ。

 関川夏央氏のことは、未だに続いていて、これからも続くようで残念です。私はファンですからね。梶原一騎小池一夫以降、1970年代に現れた、マンガ原作者のホープといえば、矢作俊彦関川夏央狩撫麻礼だったと思います。そして3名ととも、その才能から、マンガ界から出ていくのではないかと思われていました。まずは矢作が小説家に転向し、次に関川がノンフィクションの分野に転向しましたが、狩撫だけは、中途で名前を変えざるをえない挫折を味わったものの、漫画の世界だけで生きたわけです。その転向というのはやはり一種の挫折なのではないでしょうか。  

漫画原作者・狩撫麻礼 1979-2018 《そうだ、起ち上がれ!! GET UP . STAND UP!!》

漫画原作者・狩撫麻礼 1979-2018 《そうだ、起ち上がれ!! GET UP . STAND UP!!》