ミステリを読む 専門書を語るブログ

「ほしいつ」です。専門書ときどき一般書の編集者で年間4~6冊出版しています。しかしここは海外ミステリが中心のブログです。

『目くらましの道 』ヘニング・マンケル、柳沢由実子訳、創元推理文庫、1995、2007ーー謎解きミステリを警察小説で置き換える

 クルト・ヴァランダー警部シリーズの第5作目の作品で、英国推理作家協会賞(CWA賞)最優秀長編賞作。代表作の一つといっていいでしょう。1995年発表でなんと20年以上前の作品で、いかにも当時流行ったシリアルキラー的な、斧で殺害し頭皮を剥がしていく犯人の連続殺人事件で、それぞれの共通点はいったい何のかを推察していきながら、犯人を追い詰めるミステリ。

 しかし作者は中途で犯人の描写をしてしまうため、犯人像が珍しいものであるものの、推理的要素やどんでん返し要素を失っているのが残念です。

 犯人像はある有名なミステリから転用したもので、日本では本作品発表後に実際にそのような犯人が逮捕されているので、その点リアリティ満点です。

 というわけで、☆☆☆★というところです。おそらくは当時は本作が非常に評価されていたかと思いますが、その多くは模倣され陳腐化されているので、今から見ると『殺人者の顔』のほうが読後感のよいミステリだと思うけどなあ。もっと早く読むべき作品でした。 

目くらましの道 下 (創元推理文庫)

目くらましの道 下 (創元推理文庫)

目くらましの道 上 (創元推理文庫)

目くらましの道 上 (創元推理文庫)